音楽界を席巻するバンドがあった。
それが、バンプオブチキン。
多くのファンに恵まれているロックバンドはいるが、彼らが凄いのは同業者からの評価が非常に高いことである。
Mr.childrenの桜井和寿曰く、
「藤原基央の音楽は太宰治レベルの芸術」
とまで言わしめる。
魅力的なのは歌詞である。しかしいい歌詞を書くロックバンドは多い。
先ほど上げた、桜井和寿の歌詞も業界では伝説的に語り継がれるものが多数ある。
それでも、藤原基央から生まれる歌詞は、独創的なのである。その歌詞は理解に時間がかかる。
それゆえに、聴いたときは疑問符が浮かぶのである。
しかし、人生経験を積み重ねて傷や幸せに触れることが増えると、理解できるものがある。
そのときに、
BUMPが言っていたことはこういったことなのかな。
と物思いにふけることが出来る。そういった時間を超える歌詞をメロディに乗せて、多くの人々に届けることが出来るところは、このバンドのすごさだと思う。
しかし歌詞だけではない。
作り出される楽曲も2000年代当時は革新的だったともいえる。
天体観測のイントロはあらゆる音楽シーンの中でも、指折りの名イントロではないだろうか。
彼らは、時流に乗らずに音楽を作っていたフシがある。
寧ろ、時流は自分たちが作る、と言った風情があった。
今の音楽界には陰気だけども、強いメッセージ性や曲のインパクトで勝負をする楽曲を提供するグループは多い。
その先駆者がバンプオブチキン及び、藤原基央の楽曲ではなかっただろうが。
カリスマという言葉では、足らないが、多くのロックバンドの礎となった。
そんな、バンプオブチキンのすごい所を上げていきたいと思う。
バンプオブチキンのすごい所①.多数のアーティストに影響を与える。
今の音楽業界は2010年前後にあった、アイドル系が席巻していた流れが収まり、再びハイクオリティな楽曲を提供する音楽グループが影響力を持ち始めている。
動画配信の力が強くなったことで、CDの売り上げが落ちると、楽曲の力で勝負できるようになったからだと思われる。
そういったなかで、時流を掴んだアーティストを上げると、米津玄師はその一人ではないかと思う。
米津も実はBUMPに多大な影響を受けていたことをラジオ番組で明かしている。
おもしろフラッシュとBUMP
米津とBUMPの出会いは小学生の頃でPCが家にやって来たとき、たびたび見ていたおもしろフラッシュ倉庫というサイトからだと言う。
その昔は動画コンテンツなどがなく、フラッシュアニメが娯楽としてにぎわっていた。
バンプオブチキンの楽曲も、そのフラッシュアニメで使用されていた。
ラフメイカー、グングニル、Kなど。
インディーズ時代のバンプオブチキンは物語形式で語られる楽曲が非常に多かった。
そこに、手書きの絵をストーリーとしてちりばめる。無断で楽曲を使う、ある種グレーなその作品は多くの人間の胸を打ったのだ。
その中の一人に、米津玄師がいたのだ。
BUMPに影響を受けた人間は他にも
話が長くなるので割愛するが、スピッツ、キングヌー、アジカン、シシャモ、ラッドウィンプス、、、その他にも第一線で戦っている人間がBUMPの楽曲を高く評価している。
興味深いのは、それらのバンドグループの全盛期がまばらであるということである。
つまり、あらゆる時代のアーティストに普遍的に評価される魔力が彼らの楽曲にはあるということだ。
まさに時代を超える、カリスマロックバンドである。
バンプオブチキンのすごい所②.矛盾ではない矛盾。
バンプオブチキンの歌詞のすごさとして挙げられるのは、
矛盾ではない矛盾
ここにあると思う。
車輪の唄を深堀
何万歩より距離のある一歩
これは、車輪の唄のワンフレーズである。
車輪の唄の大まかな流れは、自分の大切にしていた人との別れ、そのワンシーンを切り取ったものである。
遠くに行ってしまう「君」は電車に乗る。その電車で見送るのが「僕」というわけである。
僕は、君をのせて駅の改札口までいき、そこから君は遠くの街に行ってしまうのだ。日常的な別れを切り取った一曲だが、それゆえに想像をしやすい。
それが、評価されるこの楽曲は世代を超えて聴き継がれている。
さて、この曲において、BUMP流が一番出ているのが先ほど上げた、
何万歩より距離のある一歩
だと思っている。
ただの一歩が、何万歩よりもあるわけがない。そう、聴いている人は一瞬考えるのだ。
しかし、それまでの流れから君は電車に乗ることが分かっている。だからこそ、自分では想像もできない遠地にいく君との別れを容易に想像できるのである。
短いワンフレーズで状況を説明する。
これは、日本語の美しさを凝縮した最高のワンフレーズであると思ったりする。
バンプオブチキンのすごさ③.長い時間音楽シーンに残り続けること。
これも、すごいことだと思う。
音楽というのは特に流行り廃りの激しい世界である。
どれだけ良い曲を作っても、流行りに取り残されてしまえば、話題にされなくなってしまう。
しかし、バンプオブチキンは2000年代初頭から今に至るまで、多くのファンを抱え、走り続けてきた。
バンドを揺るがす事件。
そんなBUMPを揺るがす事件はベース担当、チャマの不倫だろう。
これに関しては、深く語らない。
しかし、クリーンさが武器だったBUMPにおいて致命的な一撃だったと言える。
ただ、それでもBUMPはそこらのバンドと違った。
- 対応のすばらしさ
- 神楽曲で帳消しに
対応のすばらしさ
不倫事件において際立ったのは、対応のすばらしさだったと思う。
ロックバンドなんて好き放題やれば、良いだろ。
といって、女癖が悪いことを開き直るバンドがいるし、それはそれでアリだとはおもう。
寧ろ、成功者とはそういった不遜さこそがカッコよく見えてしまう時もままあるのだ。英雄色を好む、という様にだ。
しかし、BUMPはそういった音楽グループがいる中で即座に対応をして、ベースのチャマを謹慎処分にした。
学生時代から数十年連れ添ってきた仲間にそういった対応をするのは、簡単にできることではない。
しかし、馬謖を切る思いでそういった対応をした結果、多くのファンは残り、YouTubeのコメント欄には励ましの声が多く届いていた。
その他のSNSでも、そういった声が多くあった。
人気ロックバンドになっても、世間的なバランス感覚は崩さない。まさしくファンに寄り添う、アットホームなところがBUMPのすごさでもあるのだ。
神楽曲
くわえて、これもあった。
事件が起こった同じ時期に、BUMPはポケモンとタイアップをした。そのときに発表したアカシアは多くのメディアで取り上げられるほど、大反響だった。
日本だけでなく、海外のファンまでこの楽曲を評価している。
この勢いで、不倫で発生した負のイメージが大きく払しょくされたのは間違いないだろう。
土壇場の場面で、こういった楽曲が提供できることも一つ、BUMPが生き残ってきたこと要因ではないだろうか。
まとめ
ロックバンドの中でも、かなり異質の存在であるバンプオブチキン。
彼らが一時代を築いたことは、紛れもない事実だと思う。
かといって、多くの人に受け入れられることなく、むしろ少し変わりものな人達に人気であること。
これも、一つの魅力なのかもしれない。バンプオブチキンの名前を知っているけれど、BUMPをこよなく愛する人は少ない。
ファンの多さというよりもファンの濃さが印象的なバンドだと思う。BUMPよりも売れているバンドは沢山ある。
そして、そういった人は心のどこかしらに傷を負っていたり、影を落としていたりしていることがある。そして、影から出られない人も多くいる。
そういった人間に光を当てるのではなく、その影を認めてあげるところ。
変わろうと、促すのではなく、そのままでいいよ、というある種のやさしさを多分に孕むところこそが彼らの楽曲の根底にあるのではないだろうか。
BUMPの曲に繰り返し聞くような曲はあまりないかもしれない。しかし、特定の場面でふと聴いて見ると、驚くほどに胸に落ちる。それは、生活のワンシーンでふと思い出して聞く時などである。
自発的ではなく、偶発的にである。
そこで、再び、作られた楽曲のカラクリの精巧さに驚かされるのである。
そういった特殊な造りをしている楽曲は、まさしくオンリーワンと言えるものだろう。