歴代で最強のバッターは誰がなんと言おうと、ボンズだと思っています。
日本のメジャーリーガーで一番ホームランを打っているのは、ご存知大谷翔平です。
投手ながら、46本の本塁打は本当にすごいですし、別格といっても過言ではありません。
ただ、バリーボンズはホームランバッターの基準である40本のホームランを打ちながら、3割6分を超えるハイアベレージを誇ります。
とりわけキャリア晩年においては、走塁能力の低下に反比例するように打撃が大幅に強化。
※比較↓
まるでマリオがクッパになったようです。
安定感が増した足腰とドーピングによって、その打棒は神の領域に足を踏み入れました。
色々チートなボンズ君
元来、遠くに飛ばすバッターは三振が多いです。
2021年破格の大記録を達成した大谷翔平も46本の裏には189個の三振を喫しています。
これは大谷のバットコントロールが低いというわけではなく、メジャーリーグの投手力が起因しています。
メジャーリーグの投手は怪物揃いです。
※上の写真は「ロケット」と呼ばれた、名投手ロジャークレメンス
通算で354勝を誇ります。
最高の投手賞であるサイヤング賞は7度受賞しています。
メジャーリーグは打者と同じく、投手も怪物ばかりです。
100マイル近い剛速球に、あざ笑うかのように壁を壊すチェンジアップ、90マイルを超えるスライダーにブレーキングボールと呼ばれる鋭く落ちるカーブ。
そのすべてにおいて、日本とはけた違いのピッチャー陣。実際にメジャーの大砲クラスは三振が多いのが実情です。
怪物投手と渡り合ったボンズの打棒
それを前提として全盛期のボンズはどうでしょう。
ボンズの全盛期は2004年だと勝手に思っていますが、それを参考にしますと。
45本の本塁打を放ちましたが、喫した三振はわずか41個です。
(ちなみに四球は232個で歴代最高、敬遠数は120個でこれも歴代最高。)
なんと、本塁打よりも三振の方が少ないのです。
ちなみに2004年は日本の至宝イチローが262本のヒットを放ち、世界記録を樹立しました。
この年喫した三振は61個となっています。これもまた、怪物的な記録ですね。
しかし、ボンズの45ホーマー、41三振という奇天烈な数字を踏まえると
世界最強の安打製造機よりも、ホームランバッターの方が三振が少ない
という、異常事態が起きています。
ボンズの自信
本人曰く
ストライクゾーン全てが俺のホームランコースだ
というのです。すごい自信です。
裏付け
その言葉の裏付けとして、ボンズと勝負する投手はほとんどおらず、並み居るメジャー強豪ピッチャーがクマか何かと戦っているような印象を受けます。
2004年に至っては、出塁率は6割9厘となっています。出塁率は4割を超えれば、超一流ですがバリーボンズは一流のラインである、4割よりも2割増しで塁に出ているのです。
真の強者は勝負されない
全盛期の宮本武蔵のような選手が海外にいたわけです。
バリーボンズのどこが凄いのか?
バリーボンズのどこが凄いのか?
と聞かれたとき、色々な指標を持ち出す必要があります。
しかし、そんな指標などを考えずに即答するのであれば、僕は
全部凄い
と答えます。
選球眼、長打率、アベレージ、勝負強さ、風格
打線の中軸を任せる選手に欲しい物を全てを兼ね添えている。それがバリーボンズのすごさです。
具体的な数字。
- 本塁打
- 打率
- 出塁率
- 近年注目され出した指標について
これらについて着目すれば、その実力が分かるはず。
本塁打
ご存知の方が多いと思います。
ホームランの記録保持者です。
世界一のホームランバッターとして、メジャーリーグを沸かせました。
ボンズの本拠地はAT&Tパークです。
この球場はライトのフェンスが高く、左打者が不利と言われる球場です。
しかし、ボンズはこの球場で73本もの本塁打を放ち世界記録を樹立したのです。
2001年、73本のホームランを打った時のボンズの打撃記録は打率が3割2分8厘で、安打数が156です。
安打数が156で、ホームランが73本ということは、安打の半分近くがホームランだった
ということになります。こんな怪物バッターは今後、出てこないでしょう。
怪物的な長打率について
長打率とは、
バッターがどれだけの塁を獲得できる期待値があるのか?
表す指標です。
獲得塁打から打席数を引いて表すことが出来る数字です。
シングルヒットは1つ、2ベースは2つ、3ベースは3つ、そしてホームランは4つの塁を獲得しているとし。
仮に10打数10本塁打ならば、長打率は40割になります。
長打率の基準と桁違いのボンズ。
長打率が5割を超えると優秀と言われています。
普通のバッターは4割を超えれば、良い方です。
ではバリーボンズはどうなのかと言えば、
2001年の記録樹立時は、8割6分3厘の長打率を誇ります。
これは未だに抜かれていないアンタッチャブルレコードです。
つまり、優秀と言われているバッターの倍以上の数値を叩きだしている計算になります。
比較
ちなみに、日本最高は2013年のバレンティンで7割7分9厘です。この年は60本もの本塁打を放ち、打率も3割3分を超えました。
これでも怪物的なのですが、バリーボンズは打撃全盛期である2001年から2004年まで3回、これを超える記録を出しているのです。
- 2001年→8割6分2厘
- 2002年→7割9分9厘
- 2004年→8割1分2厘
1シーズンだけでもすごいのに、それを複数達成している。
この安定感を踏まえて考えれば、ボンズが歴代最強と呼ばれる理由もどことなく理解できるのではないでしょうか。
打率
ボンズの真骨頂と言えば、バットコントロールにあると思います。
ホームランを打ちながら、圧倒的なコンタクト率を誇るのです。
ボンズはインパクトの強さもさることながら、テクニックが群を抜いている選手で、
ドーピングをしても、あの打ち方を出来る奴はいない
と、メジャーでも評判になっています。
ただ、意外なことにボンズの打率が覚醒(色んな意味で)したのは、37歳以降になります。
それまでは、身体能力で賄っていたのでしょうか。真意は分かりません。
ボンズの塁に出る能力
具体的な話をすると、ボンズの打撃全盛期は、37歳~41歳までであり、この期間にドーピングをし打撃に安定感が生まれていたと考えられますね。
参考までに、37歳から41歳までの打率、出塁率を見てみると、
- 2001年→3割2分8厘で出塁率5割1分5厘(本塁打記録樹立)
- 2002年→3割7分で出塁率5割8分2厘
- 2003年→3割4分1厘で出塁率5割2分9厘
- 2004年→3割6分2厘で出塁率6割9厘(歴代最高出塁率樹立)
打率はともかく、37歳から41歳までのボンズは、出塁率が怪物的です。
どこの誰が、出塁率5割を4年継続できるのか。
参考までに日本最高の出塁率は落合博満の4割8分7厘です。
三冠王を三回達成した打撃の神様のキャリアハイ記録をバリーボンズは4年連続で優に超えている。
とするのなら、その脅威度が分かるのではないでしょうか。
近年注目され出した指標について
野球の成績を見るときに、打率、本塁打、打点を見るのは常識です。
しかし、選手の価値とはそれだけで表せるものではありません。
メジャーリーグはデータに重きを置いています。
セイバーメトリクスといって、より細かい数値を導き出すときに活用される数字です。
日本においても、議論する際に活用され出しています。
そして、その中で最もなじみ深いのはOPSではないでしょうか。
OPSとは
打者の優秀さを表す指標です。
欠点が多い指標と言われていますが、それでも打者の実力をざっくばらんに見るうえでは便利です。
実際にOPSが高い選手は、チームへの貢献度が高い傾向にあることが分かり、日本のOPSで歴代上位を見てみると、
- 王貞治(1.08)
- 松井秀喜(0.995)
- A・カブレラ(0.990)
- 落合博満(0.986)
- T・ローズ(0.940)
と歴史に残る大打者が君臨していることが分かります。
肝心のOPSを導き出す式は
長打率+出塁率=OPS
です。
つまり、遠くに飛ばせて塁にたくさん出れる選手、これを導き出す数字がOPSです。
では、全盛期のボンズはどんな数字を出したのか、と言えば
1.422を記録します
OPSの基準としては7割を記録すれば、優秀なバッターとされる中で、それの倍以上の数字を出しているわけですから、驚異的と言えます。
実は、ボンズの凄味を表す数字で一番語られるのが、このOPS1.422なのです。
本塁打、出塁率もそうですが、この1.422はこれからどんな選手が出てきても破られることのない不滅の大記録です。
仮に破られるとすれば、それはボンズと同じくドーピングした選手になるだろうと思います。
瞬間風速でボンズを超えることが出来ても、継続してこれほどまでに本塁打、出塁率をキープできる選手は出てこないでしょう。
ボンズ、アンタッチャブルレコード一覧。
ということで、散々ボンズのすごさを語りましたが、最後にアンタッチャブルレコードをおさらいして終わりたいと思います。
本塁打73本
下にはマークマグワイア(70)、サミーソーサ(66)、が続きます。
しかし、彼らも違反をして60本の本塁打を超えることに成功した人たちです。
今の違反に厳しいMLBで超えることが出来るとすれば、相当に傑出した選手でなければ厳しいです。
そして、そんな選手はシーズン後半に四球攻めされる運命にあります。恐らくアンタッチャブルレコードだと思われます。
長打率8割6分3厘
こちらもアンタッチャブルかと思います。
長打率は凡退すれば下がるので、数字を出すためにはコンタクト能力を磨く必要があります。
脳筋の指標に思われますが、打者としての実力を測る上で最も信頼できる指標だと思っています。
しかし、基本的にバッターは打てば打つほどにマークされます。そして現代のマークは厳しく、コースだけでなくシフトがあります。
引っ張り傾向にある選手は大胆なシフトが敷かれて、大きく打率を落とすのです。
ボンズ自体もすごいバッターでしたが、2000年代初頭は現代のような大胆なシフトもありませんでした。
そう考えれば、今後超えることが出来るかと言われれば、かなり大きめの「NO」が出てくるかと。
出塁率6割9厘
ボンズの記録を見るときに改めて思うことは、
安打数の少なさです。
なぜ安打が少なくなるかと言えば、四球が多いからですね。
2004年は首位打者に輝きながらも、135安打しか打っていません。代わりに四球は232個あります。
2004年アメリカンリーグの首位打者イチローは262安打を放ち、打率3割7分2厘でした。
ボンズの倍近くのヒットを放っていることを考えれば、野球の深さを知ることが出来ます。
この二人の打率は同じくらいで、イチローが3割7分2厘、ボンズが3割6分2厘です。
ボンズは出塁率、イチローは安打数。
同じ首位打者でもこうも違いが出てくるし、二人とも不滅の大記録を達成していることを考えると、野球選手の多様性に触れることが出来ますね。
OPS1.422
これは先ほども書きましたが、マジで怪物です。
その昔、
ほーむらんもうつけど、ひっともうつよ
という、キャラクターがパワポケというゲームに登場したのですが、まさしくそれを体現している数字ですね。
歴代唯一の700本、500盗塁の達成者
散々、打者ボンズのすごさを書きました。
しかし、30代までは野球選手として高みにいたのがボンズです。
トリプルスリーを3度達成しており、うち一度は40-40を達成。つまるところ、
打って走れたのが若かりし頃のボンズです。おまけのゴールデングラブも受賞しており、まさしく5ツールプレイヤーとして君臨していました。
ちなみに、40-40はAロッド、ホセカンセコ、アルフォンソソリアーノ。
と言ったそうそうたるメンツしか達成していない大記録です。
日本での達成者は0。
ホームランバッターの勲章である40ホーマーと韋駄天の証明である40盗塁を同時に達成するのですから、とてつもない記録です。
ですが、ボンズの凄味はオールラウンダーを複数年にわたり記録し、盗塁数も積み上げていたことです。
特筆すべきは1990年、26歳の時に達成した
3割1厘、31ホーマー、52盗塁でしょうか。
達成が厳しい、トリプルスリーを抑えつつも、50を超える盗塁を達成しているのです。
そして、これ以外にもボンズは30、40近い盗塁を毎シーズンのように積み上げている。
それが、700-500という異次元の記録を作り上げたのだと思います。
バリーボンズのドーピングについて、個人的見解でまとめる。
本来、最強だった選手が努力と薬物に手を出した結果、ここまでの記録を樹立できたのです。
ボンズのドーピングに関して、賛否両論があります。そして「否」が多数を占めることも事実です。
しかし、長年野球に携わった筆者として、
ボンズは選手としてではなく、作品
としてみるのが正解なのかなと思っています。
作品を作る時は、好きな技法で描いても誰も問題ありませんし、たとえ邪道でも見るモノが感動すればそれでOKなのです。
ちょうど、ドーピングをしたボンズもそういった領域でやっているのかな、と思ったりします。
実際に、打撃の円熟期に入ったボンズの打ち方は芸術的に高いレベルに昇華されています。
お手本過ぎて、逆にお手本にならないのです。