未来・第281号


            未来第281号目次(2019年11月7日発行)

 1面  天皇即位式弾劾臨時

臨時国会・憲法審査会
改憲阻止

10・20反戦・平和集会集会
720人

 2面  10・27日本と世界・反戦・


関電抗議
高浜現地からリレーデモへ

「戦争法は違憲」訴訟2周年
あきらめと忘却が最大の敵

 3面   今年3回目の南北首脳会談
実質的な終戦宣言≠ノ合意      

憲法・沖縄・市民のちから
知事選勝利へ 神戸で集会
9月日     

投稿
大接戦の沖縄知事選へ
仲間達と玉城さんを応援
神戸市 大林ェ治

 4面 原発のない国へ 私達の手で
福島事故 政府、東電は責任をとれ
9月17日 東京

韓国の核問題と米朝会談の行方
「朝鮮半島の分断が影響 川瀬俊治さん」

   5面 日韓民主労働連帯・中村猛さんに聞く
受け継がれる全泰壱精神(下)

反戦と「病者」解放をつらぬいた南徹夫同志を悼む
福島 正夫夏期カンパのお願い

 6面  シネマ案内
「明日が信じられる…たとえ、昨日がどんなでも」
鄭義信(チョンウィシン)監督『焼肉ドラゴン』

本の紹介
『原爆の世紀を生きて〜爆心地からの出発』
〜核なき世界への直言、戦後社会運動の現場から〜
米澤鐡志・著(アジェンダプロジェクト発行)

改憲阻止へ大衆討議 8月25日 神戸
改憲発議・国民投票見すえた戦線を

       

大飯原発 「運転差し止め」取り消す
名古屋高裁 福島事故忘れ、政権に追随

4日、名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)は、2014年5月の福井地裁・樋口判決をくつがえし、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の「運転差し止め決定」を取り消した。司法の独立性を放棄し、政府の原発再稼働方針にいいなりになった判決に強い憤りの声があがっている。反動をはね返し、再稼働反対運動を強化しよう。 午後3時の開廷時間が迫るなか、名古屋高裁金沢支部の正門前では、法廷からの連絡を待つ人たちで埋めつくされた。いつもは、一縷の期待をこめているが、この日は誰もが怒りを心の内に秘めながらその瞬間を待っている。 やがて、裁判所から飛び出してきた2人が「不当判決」「司法は福島から目をそむけるのか」と書かれた幕を広げた。予想通りの判決だ。怒りの声、シュプレヒコールが応じる。法廷から憤然として出てきた河合弘之弁護人は「馬の耳に念仏判決」と皮肉り、原告団長の中嶌哲演さんは「(内藤裁判長は)関西電力のサーヴァント(召使い)だ」と厳しく弾劾した。 無責任、茶番 原告団、弁護団、支援者たちは金沢弁護士会館に移り、判決を読み込み、その分析と評価をおこなっている弁護団を待った。その間、法廷でのようすが報告される。内藤裁判長が判決文を読み上げているあいだじゅう、傍聴席から「茶番だ。あなたの判断は間違っている」「福島はどうなった」「最新の知見は入っていない」「司法の敗北だ」などの抗議と弾劾が叩きつけられた。 原告の浅田正文さんは「三権分立を、特に司法の役割を放棄する酷い判決」、福井県嶺南地方から駆けつけてきた女性は「無責任な判決だ」と、口々に内藤判決を批判した。 午後4時、弁護団長の島田広弁護士は「原告敗訴は予想通りだったが、その内容は想像を超える酷い判決だ」、「福島事故を忘れ去った判決」、「無責任で、ずさんな判決」、「これは裁判じゃない、茶番だ」、「4年間も費やして、何ともみっともない判決」と、徹底的に批判した。 井戸謙一弁護人は「クリフエッジ(限界)を越える地震はありうると言いながら、安全だと言っている。論理矛盾を来している。裁判所が追いつめられている証拠だ。安倍政権下の官僚と同じ構図。ここを突破していこう」と訴えた。中嶌哲演さんは「法廷内外でたたかいつづけよう」と決意を表明した。 今こそ民衆の奮起を 今回の判決で裁判所は「法の番人」としての役割を放棄した。法制度下の福島原発がどれほどの被害をもたらしたのか、原発が子どもたちにどれほどのリスクを遺すのかを検証もせず、悪政を野放しにする司法の姿がここにある。「司法の役割」を超えているのではなく、「司法の役割」を終えたのである。ブルジョア社会の三権分立が幻想であり、民衆の力にこそ依拠しなければならないと、わたしたちに奮起を求めている。(田端登美雄)

オスプレイの配備やめろ
10日 防衛省に抗議デモ

10日、都内で「飛ばすな! 買うな! オスプレイ! 大軍拡・基地強化NO! 防衛省デモ」がおこなわれた(写真)。主催は、大軍拡と基地強化にNO!アクション2018。 事故で数十人の死者を出しながら運用が続けられているオスプレイ。沖縄にも24機が配備されて約5年半が経過した。すでに2機が大破し、3人が犠牲になっているにもかかわらず、安倍政権は今年中に首都圏2カ所に配備しようとしている。 日本が購入するオスプレイの価格は、米軍の購入価格の数倍に設定されている。排外主義をあおり、軍拡を進める安倍政権を倒そう。この日は防衛省への申し入れもおこなわれた。

耕す者の権利は奪えない
強制執行するな℃s東さんが訴え

請求異議裁判 9月27日に最終弁論決定 6月28日、市東さんの農地をめぐる請求異議裁判が千葉地裁(高瀬順久裁判長)で開かれた。傍聴には150人が参加。当該の市東孝雄さんと三里塚芝山連合空反対同盟の萩原富夫さんが証言した。 萩原さんは、強制執行によって、市東さんと共に営む有機農業、生産者と消費者の連携という産直運動の根幹・土台を奪い、破壊し、市東さんの生活そして農業をできなくしてしまうと証言した。そして、「農業をやっている者にとって耕作者にこそ権利がある。空港会社はその小作人に無断で底地を買収し、立ち退きを求める裁判を起こした。裁判所は土地泥棒に手を貸すようなことをしてはならない」と証言し、強制執行を認めないよう裁判所に求めた。 市東さんは明け渡しを求められている農地が、親子三代にわたって耕作してきた農地でであり、全耕作地の73%にあたり、営農に壊滅的打撃を受けること。小作地の底地の所有権がNAAに移ったことは、新聞記事で初めて知った。小作人に黙って地主が第三者に土地を売るなど、前例もなく違法、売買は無効。「二度と強制的手段をとらない」と言いながら、一方的に明け渡しを迫っている、と怒りをこめて証言。 「私はこの地で農業をやりたいだけです。実家に戻り、一番苦労したのは土づくり、土壌は生き物。有機農業、産直運動こそ自分の生きる道だと確信しており、農地を取られることは自分の命を取られるのと同じことだ」。 最後に「NAAが自分で強制的手段を取らないと約束しておいて、強制執行をするのは、明確に権利濫用です。これを許可するなら裁判所の自殺行為です。裁判所が正義を実現することを求めます」と証言を締めくくった。 両証言後、今後の裁判について、弁護団から徹底審理と石原健二さん(農業経済)ら専門家の証言採用を改めて求めた。高瀬裁判長は、専門家からの証言は「意見書が提出されているから不要」としながらも、弁護団はもちろん傍聴者の強い抗議で、7月3日に進行協議をおこなうとし、結論を先送りせざるを得なかった。 3日におこなわれた千葉地裁での進行協議において、高瀬裁判長は次回7月17日に石原健二さん(農業経済学)、内藤博光さん(憲法学)の補佐人的立場からの意見表明を採用するとした。しかし同日に最終弁論もおこない、結審することを明示した。弁護団は再考を促したが協議は一旦終了となった。7月9日、再度の進行協議で石原さんと内藤さんの意見表明などを7月17日に実施、最終弁論を9月27日に実施することで決着した。 市東さんの農地取り上げを強制執行する緊急性、必要性、そして正義・大義はない。それゆえ徹底審理が求められる。強制執行不許可以外の結論はない。

2面

関生支部に大弾圧
空前の労組つぶしに抗議
労働者、市民が緊急集会

8月、9月で全日建連帯労組関西地区生コン支部の委員長、支部役員5人を含め20人が滋賀県警、大阪府警に逮捕された(本紙前号に一部既報)。その逮捕者数、強制捜索回数12回(昨年9月以来)などは一労組への弾圧としては異常な規模であり、今後も警察はその拡大を公言している。 9月22日、大阪市内で「労働組合つぶしの大弾圧に抗議する緊急集会」がひらかれた(写真)。実行委員会構成の労組・諸団体の発言者12人が壇上に並び、各団体旗も立ち、被弾圧当該・発言者を取り囲む設定で集会は開始された。関生だけへの弾圧ではない、許さんぞという集会意思が明確だ。急ぎ設定された集会だったが予想を超え会場は満杯になり、弾圧への怒り、危機感、熱い連帯の発言があふれ「関生弾圧はわれわれへの弾圧だ」という一点で弾圧粉砕を決意する集会となった。集会は全港湾大阪支部が中心となり労組・市民団体で緊急結集した実行委員会によっておこなわれた。 産業民主化への弾圧 全港湾大阪支部委員長は開会宣言で、「関生の運動や武委員長を『悪の枢軸』とした労働組合運動弾圧を許すな。『労働組合ここにあり』と全国から本日結集した」と発言。 「何がおこっているのか」と題して武洋一関生支部書記長が経過を報告した。80年代から生コンクリート業界で大独占の支配とたたかうために労働組合と協同組合が協力して産業の民主化を進めてきた。これに幾多の弾圧があったが、大阪では100%の協同組合支配で安定してきた。そこで一部悪質幹部が利益を独り占めするためにヘイト・元在特会の右翼と結んで関生支部をつぶそうとしてきたが、これも裁判で彼らが敗北するなかで、ゼネコンの意図も受け今回の大弾圧に政府中枢が踏み切ったものである。それは関生の産業民主化のたたかいが関西から全国に広がり、労働運動の一つの潮流になることをつぶそうというものである。組合オルグ、団交、ストライキや争議和解解決金という労働組合の権利行使が威力業務妨害、恐喝・強要罪だとされている、このような攻撃は関生支部だけの問題ではない。弾圧で労働組合をつぶすことはできない。この弾圧には負けられない。沖縄のたたかいと連帯してたたかいぬくと締めくくった。 全日建トラック支部が、1年9カ月のストをたたかうMK運輸の闘争報告。この弾圧には一歩も引かないと決意表明。 「反社会的集団」 永嶋靖久弁護士が「一連の弾圧の狙いは何か」と題して報告。建設業界ゼネコン・セメント大独占のボロもうけ構造とたたかうために、中小経営も組織した産業政策・産業民主化が業界を揺るがしていることへの全面的攻撃にでてきたものである。さらにこれは来年のG20大阪サミットを前に反政府運動つぶしに出てきたものだ。「企業の外で活動する組合は許さん」とか、品質無視の安売りや労基法違反などの不正摘発のコンプライアンス活動を「犯罪」視することを取り調べで公言している。その点で弾圧の質が違う。暴力団対策の「組織犯罪対策課」がこの弾圧の中心で各県警が連携してきている。労働組合運動、反戦・沖縄連帯闘争を反社会的集団としてこの一連の弾圧が襲いかかっている。この攻撃は2年はつづく。労働運動全体への攻撃として大きな声を上げていこうと訴えた。 労働運動の命運が つづいて実行委員会を構成する全日建近畿、近畿コンクリート圧送労組、港合同、大阪全労協、管理職ユニオン関西、釜ヶ崎日雇労働組合、関西合同労働組合、なかまユニオン、北大阪合同労働組合、全交、連帯ユニオン議員ネットから「全ての労働組合のたたかいだ」「これを許せば大阪の労働運動は終わる」「労働者はこんな弾圧に負けない」「関生支部と共にたたかってきて多大な支援を受けてきた。ストが威力業務妨害、団体交渉や団交要求が強要なら組合は成立しない」といずれも関生弾圧は自分たちへの弾圧だとの発言が続いた。会場の発言希望者の中から人民新聞弾圧、8・6ヒロシマ弾圧。そして教育合同の委員長から「受けた支援は支援で返す」「憲法28条にけんかを売ってきた。潮流をこえて立ち上がろう」と発言があった。その後、全港湾徳島支部(四国)から5人の仲間が登壇して各労組発言者とエールをかわし、委員長が「2010年に徳島県教組は在特会から襲撃を受け立ち上がった。人ごとではない、駆けつけた。絶対最後までたたかう」と述べ、最後にシュプレヒコールを呼びかけ、大きな声が会場に響き渡った。 潮流をこえた団結を 多額の会場カンパが報告された。川口真由美さんの「歌と連帯メッセージ」で会場が決意に包まれる。 集会まとめを全港湾大阪支部副委員長がおこない、「今日はスタート。逮捕された20人が帰ってくるまでたたかいをさらに広げる。われわれの事だ頑張ろう」と締めくくった。 集会では、広範なたたかいを作り出すために『大弾圧との闘いの呼びかけ』(別掲)が発出され、毎週土曜日に滋賀県警と大阪府警への抗議行動を展開することが提起された。 大逆事件 この一連の弾圧とのたたかいに何が問われているのか。「平成の大逆事件」(愛知連帯ユニオンの声明)という受けとめが求められている。大逆事件当時、この大弾圧に日本の社会運動が恐怖し、屈服したことがその後の運動のゆくえを決めたのではないだろうか。この弾圧は連帯ユニオンの組合機能を停止に追い込み、労働組合活動の実質禁止を狙う。そのことで、このかん労働運動の停滞を打ち破る苦闘のなかから生まれつつあった産業別・職種別運動、社会運動的ユニオニズム、連帯経済運動を「組織犯罪」「反社会的」として芽のうちに摘み取ろうとするものである。「関生だから」とか、人ごとと考えるならば、労働運動、社会運動の死を意味するし、活動家として終わりである。9・22集会は労組などが壁をこえて集い、反撃の考え方、陣型でのまさにスタート集会となった。この弾圧とのたたかいはここ2年つづくたたかいとなる。広範で粘り強くたたかうことが求められている。「呼びかけ」に応えよう。(森川数馬)

連帯ユニオン関西生コン支部への大弾圧との闘いの呼びかけ
労働組合つぶしの大弾圧に抗議する9・22緊急集会実行委員会

関西生コン支部へ、かってない弾圧が拡大しています。滋賀県警刑事部組織犯罪対策課による8月9日、8月28日の弾圧に続き、9月18日には大阪府警が16名もの支部役員・組合員を逮捕しました。逮捕者は武建一執行委員長以下20名に及んでいます。労働組合を機能停止に追い込もうと関西の他府県警も弾圧拡大に動いています。権力・資本の意を受け、買収された排外主義者・ヘイト集団の襲撃も続いています。 この弾圧は悪質資本への抗議行動や組合への組織拡大活動など、労働組合としての正当行為を恐喝未遂、威力業務妨害、強要未遂という刑事犯罪、更には「組織犯罪」にデッチ上げ禁圧しようとするものです。これがまかり通れば、いずれ他の闘いへと波及します。憲法28条(団結権、団体交渉権、団体行動権)は無きものとされ、労働組合活動は非合法・禁止という事態になりかねません。私たちは強い危機感をもって9・22緊急集会をもちました。 関西生コン支部は労働運動の停滞の中、生コン業界を切り口に本格的な業種別労働運動の先進的地平を開き、反戦平和・沖縄連帯運動を力強く闘ってきました。だからこそ権力・資本はここに未曽有の大弾圧を集中してきています。反弾圧の闘いは改憲・独裁を進める安倍政権との闘いでもあります。弾圧をはね返すために、今、大同団結して闘うことが求められています。多くの労働組合・諸団体の皆さまに連帯を呼びかけます。 弾圧との闘いを更に拡大し強化するために、以下の取り組みをよろしくお願い致します。   1 団体または個人として9・22実行委員会の趣旨および活動に賛同する。 2 弾圧への抗議声明を出す。 3 当該・府県警察本部へ抗議文を送る。 4 9・22実行委員会へ参加する。      問合せ連絡先 全港湾関西地方大阪支部 (電話)  06―6575―3131 (FAX) 06―6575―3134

3面

投稿
「改憲発議」させない闘いを
―『広告が憲法を殺す日』を読んで
静岡市 大庭 伸介

「憲法改正」は最終的に国民投票で決められることになっている。ところが、国民投票法の中身は自民党に断然有利にできている。 『広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM』(本間龍・南部義典/集英社新書)は、元博報堂社員で広告業界に精通した人と、国民投票法(民主党案)の起草に携わった人の対談で、大変わかりやすく問題点を明らかにしている。重要なポイントを紹介しよう。 テレビによる宣伝は野放し ▼国民投票法は国民投票運動期間中のキャンペーン資金や広告内容の規制について、ほとんど触れていない。つまりカネさえあれば圧倒的な量のテレビCMを放映できるので、資金力のある陣営が断然有利である。 ▼「憲法改正」の国会発議がおこなわれ、国民投票となった時点で、改憲・護憲のどちらに投票するか決めていない人は、さまざまなメディアの宣伝広告に左右される。 ▼広告内容のチェックは広告主や放送局、出版社にゆだねられる。投票日の14日前から投票日までの間、テレビやラジオによる宣伝は禁止される。しかし抜け道がある。禁止されるのは「国民投票運動のためにおこなうCM」で、「国民投票運動のためではないCM」は流すことができる。「賛成しよう」「反対しよう」と呼びかけるCMは駄目だが、タレントが出てきて「私は賛成します」と言うだけのCMは規制されない。「美しい日本を取り戻す」も「自衛隊の皆さんに誇りと自信を」もOK。 ▼国民投票の発議後、各党は広報広告を放送し、出版・配布できる。その時間や内容・回数を決めるため、国会に衆・参10名ずつの委員による「国民投票協議会」が設けられるが、委員は各会派の議席数に応じて割り当てられる。 電通が改憲CMを独占 ▼日本の広告業界は電通など大手寡占状態だが、電通グループの2016年の連結決算売上高は約4兆9000億円。博報堂ホールディングスは1兆2600億円。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌のすべてで電通はシェア1位。広告業界世界一の売上高を誇る電通は、まさにガリバーだ。 ▼電通社員から政治家になった人は、自民党がほとんど。安倍首相の妻・昭恵も電通で働いていたことがある。電通の地方支社には、自民党の議員や地元の有力者の子息や関係者が大勢いる。彼らは地方における政治と産業とメディアをつなぐハブのような役割を果たしている。 ▼「改憲をいつ発議するのか」「投票日をいつに設定し、国民投票運動期間を何日とするのか」は与党がカードを握っている。自民党と癒着した電通はその情報をいち早く入手し、それを前提に十分な準備ができるので、ものすごく大きなアドバンテージとなる。 ▼テレビのプライムタイム(19時〜22時)のCM枠のシェアは2009年の公正取引委員会の報告書によれば電通が49%、博報堂が26%、高視聴率の「オイシイ枠」に流れる国民投票のCMは、賛成派だけで占められる可能性がある。反対派のCMは深夜と早朝の時間帯にしか流れず、ほとんどの人に見てもらえない、ということすらありうる。 官房機密費もデマ放送も参戦? ▼内閣官房の機密費が、改憲派の有力議員や著名人・文化人・御用学者に流される可能性がある。彼らは政党ではないから、会計報告を公にする義務はない。 ▼米国ヘリパッド建設をめぐる報道で2017年に大炎上した「ニュース女子」は、東京MXテレビというローカル局の番組であった。こうしたろくに取材もしないでデマを流すケースが、改憲発議後はもっと増えるだろう。 ▼総務省の調査報告では、「情報源としての重要度」は全世代でテレビ、ネット、新聞、雑誌の順。「主なメディアの平均利用時間」は、10代・20代でテレビよりネットが上回っているが、信用度ではテレビが60%で、ネットは圧倒的に低い。 ドイツには国民投票はない ▼国の未来を左右し、国民一人ひとりが真剣に向きあって考えるべき課題に、テレビCMを使ったイメージで影響を与えようとする考え方は、根本的に間違っている。ドイツには国民投票がない。ナチス時代の苦い経験があるからだ。ナチスは映像や音楽やファッションからプロダクトデザインに至るまで総動員して国民の気持ちをひきつけ、独裁体制を確立した。そんなナチス体制下でおこなわれた国民投票では、彼らの提案が約90%の支持を得て承認された。この事実は「国民投票と広告」の問題がはらむ危険性を端的に示している。 ▼いったん発議して国民投票が否決されたら、向こう数年は同じテーマで「憲法改正」を発議することが、事実上できなくなる。そうしたなかで発議した側がどれだけ必死になってかかってくるか、改憲反対派の多くはまだ理解していない。 以上この本を読んで、「国民投票で決着をつけよう」とか「国民投票で勝利できる」という考え方が、いかに甘い主観的願望にすぎないかということを改めて痛感した。 「森友」「加計」をめぐる文書の改ざん、自衛隊の「日報」隠し、さらに安全保障関連法(戦争法)や特定秘密保護法、共謀罪など民主主義を完全に無視し、国民を愚弄しきった審議や採決で明らかなように、ナンデモアリの自民党の改憲策動を阻止するために何が必要か。 まず何よりも、改憲発議をさせないようにすることが最大のポイントではないだろか。そのために、地域の末端からの組織戦こそが勝敗のカギを握っていると思う。

『不幸な子どもの生まれない運動』は終ったのか?
―神戸で集会
兵庫県 高見 元博

6月30日に神戸市内でおこなわれた集会には、会場いっぱいの170人以上が参加し、熱気にあふれるものとなりました。兵庫県の『不幸な子どもの生まれない運動』とその賛美、それにたいする糾弾の過程が報告されました。この運動は、1966年から、優生思想に基づき「しょうがい者は不幸を背負った子どもだから生まれないようにしよう」として県が推し進めた施策です。羊水診断でしょうがい児が産まれる前に見つけることと、しょうがい者にたいする強制不妊手術を県の予算で推し進めました。1974年、〈大阪青い芝〉らの抗議行動によって中止に追い込まれました。 侵略戦争と差別 ところが、2016年、兵庫県立こども病院の移転記念誌に、その運動を賛美する文章が掲載されました。しょうがい者や支援者の抗議によっても、兵庫県はホームページから同記事を削除するだけで記念誌は放置。再度の申入れには回答もしないことに抗議して、この日の集会は開かれました。兵庫県の形式的で、謝罪もしない、総括もしないという態度にあらためて怒りが湧きました。 同運動を中止に追い込んだ〈大阪青い芝〉の元事務局長は当時のたたかいを振り返りました。県立こども病院に今年4月まで勤めていた看護師は、労働者の側からいかにたたかったのか報告。そして強制不妊手術と今の実態を報告しました。しょうがい女性は出生前診断の差別性を糾弾しました。 しょうがい者は不幸だという差別的な決めつけが全くの差別的偏見であり、幸福か不幸かはその人自身が決めること、生まれて来てはならないと、いったい誰に決められるのでしょうか。さらに、われわれの内なる優生思想を問い、日本による対外侵略の歴史と内での優生思想が同質のものではないかと問う報告がありました。 残る排除の論理 会場からはピープルファースト兵庫や奈良と京都の脳性麻痺者から発言がありました。私は日本の精神科病院の74%(私立精神科病院の90%)を組織する日本精神科病院協会(会員数1206病院)が1953年に精神しょうがい者(知的しょうがい者を含む)を社会の危険物だと決めつけ、子どもを生まないように優生手術の予算を国に要求したという体質が、最近の「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」という『日精協誌』の主張に至るまで貫かれ、差別は過去のものではないと発言しました。 寄せられた感想に「この国が今日参加していた人たちのような人たちだけで出来ていたらいいのに」というものがありました。 集会を受けて今後兵庫県にたいする要求と交渉が続きます。これからも、関心を失うことなく兵庫県に同運動の総括を付けさせるためにたたかい続けましょう。そして、寝屋川市の精神しょうがい者監禁殺害事件、三田市の知的しょうがい者監禁事件、各地で繰り返されるしょうがい者施設における殺害、傷害事件を許さず、また2016年7月26日の相模原市津久井やまゆり園事件を忘れることなく、7・22兵庫、7・26大阪の「やまゆり園事件を忘れない。障害者を殺すな」デモンストレーション、7・28東京「優生保護法にどう立ち向かうのか」集会などの行動に起ち上りましょう。 三田市の知的しょうがい者Yさんの監禁事件での神戸地裁の判決は、20数年間監禁して執行猶予というあまりにも軽すぎるものです。しょうがい者虐待事件では虐待した側の親に同情が集まるという現実は許し難いものです。また6月28日付『神戸新聞』北摂版の同事件神戸地裁判決を報じる記事での差別的記述(「これが監禁罪になるのか」という声を掲載)など、問題は山積しています。責任を持って取り組み、しょうがい者が人間を取り戻すたたかいの前進を実現しよう。

労災申請、統計開始から最多

昨年度、仕事が原因でうつ病などの病気を発症し、労災申請した件数は1723件、認定506件だった。 厚生労働省によれば、この数字は、統計調査が始まった1983年以降、「最多となった」という。 未遂を含む自死に追い込まれた人の数は98人にのぼる。過重労働を原因とする脳・心臓病による労災認定が253件で、そのうち過労死は92人。過労が原因による自死との合計は190人となった。 脳・心臓病発症の認定を職種別に見ると、トラックやタクシーなどの運転従事者が89件と全体の3分の1を占めており、最多となった。うつ病などによる申請は福祉・介護事業の従事者が多い。年代別にみると20代が増加している(7月6日)。 安倍政権が6月29日、可決成立を強行した「働き方改革関連法」では、罰則付きの残業規制≠おこなうというが、年720時間、月100時間を特例として認めている。過労死ラインとされる80時間を大きくこえており、「規制」にはほど遠い。また建設・自動車運転・医師などには5年間の規制猶予を設けるなど問題だらけだ。

4面

焦点 米朝会談とトランプ政治(下)請戸 耕市
労働者の反乱、激動の時代へ

ポピュリズムとトランプ グローバリゼーションの結果にたいして、アメリカじゅうで不安・落胆・絶望・怨嗟の声があふれている。その声は、反グローバリズムの労働運動や社会運動として広く展開される一方で、白人中間層を中心にした声なき声のポピュリズム的な反乱という形で現れている。まさにグローバリゼーションがその底辺から破綻している。 エリートに騙された ポピュリズムとは、〈自分たちの声を誰も代表してくれていない〉と感じる人びとが、自分たちの声を聴かないエリートにたいして、異議を申し立てる反乱である。 エリートとは、ビジネスエリート、民主党や共和党の政治エリート、主流メディア、リベラルな知識人など。彼らはこぞって、〈グローバリゼーションは良いこと〉であり、〈誰しもを成功に導くシステムだ〉と語ってきた。 当初、その話に労働者は惹きつけられた。しかし、何世代も携わってきた自分たちの仕事がなくなる事態によって、それが幻想であったことに気づかされた。 社会を支配し、仕事や生活のルールを支配するエリート。幻想で欺き、窮状を訴えても無視するエリート。奴らへの逆襲が始まった。トランプ現象とは、グローバリゼーションにたいする極めて歪められた形ではあるが、反乱の一形態に他ならない。 トランプ支持者 トランプが、ポピュリズムを作り出したのではない。むしろ、格差・貧困・分断、雇用・社会・環境の破壊、エリートの騙しと無視、それらにたいする労働者の不安・落胆・絶望・怨嗟―これがトランプを作り出した。 彼らもまたグローバリゼーションの犠牲者にほかならない。しかも、労働運動や社会運動からも相手にされてこなかった。エリートが語る人権や平等などのキレイごとにたいして強い不信を抱いている。そして自分たちの生活を脅かすものとして、エリートも、自分より下層の者も一緒くたに攻撃している。しかし、トランプを支持する人びとを「反知性的」「視野が狭い」「差別主義者」として切って捨ててはならない。反グローバリズム運動の広がりのなかでトランプの幻想から解放されていくのだろう。 トランプと支配階級 見て来たように、トランプは、アメリカの支配階級の考え方を全く共有していない。トランプの政治は支配階級の総意ではない。グローバリゼーションとアメリカの覇権を破壊しかねないと危機感を募らせている。しかし、支配階級は、トランプの政治を止めることができない。なぜなら、グローバリゼーションの行き詰まりと破綻が顕わになってくるなかで、トランプの政治を批判はするが、それにたいする代案が示せないからだ。もはやスキャンダルか暗殺か、いずれにせよ、支配階級の抗争は泥沼である。 世界はどこへ トランプの政治は、世界史を未経験の危機の時代に引き込むだろう。 グローバリゼーションがいよいよ行き詰まりを見せ始めている。 08年のリーマンショックで、米国中心の金融システムのバブルが崩壊して以来、各国の当局は資金注入(QE)によってシステムの延命を図ってきたが、限界を迎えつつある。 グローバリゼーションの最終消費地であるアメリカの労働者・消費者が、雇用喪失、格差・貧困、借金苦・生活苦に陥っている。グローバリゼーションの土台をなすアメリカの消費が限界に近づいている。 しかし、もっとも重大なのは、グローバリゼーションの結果にたいして、労働者のポピュリズム的な反乱がおこり、トランプの政治を媒介にして、グローバリゼーションを底辺から破綻させることである。保護主義と貿易戦争は、グローバルな連関を寸断し、グローバル資本の展開を阻害する。それは、リーマンショック以上の深刻な金融危機と世界大不況を現実化させる。 世界秩序の崩壊 トランプの政治として進行する事態は、多極化戦略への転換といった整合的なものではない。支配階級もコントロールできない事態として、覇権放棄が進行しているのである。 では覇権交替はあるのか? 中国が次を狙っているという見方は、脅威論と相まって、広く聞かれる。しかし、覇権とは、政治・経済・軍事の支配力であるともに擬制的な普遍性がカギをなすが、中国には、前者はさて置き、後者について、アメリカやヨーロッパ的近代にとってかわりうる要素がない。 中国は、グローバリゼーションのなかに深々と組み込まれている。グローバリゼーションの行き詰まりは中国をも激しく襲う。そういう情勢に怯えて、習近平は一強体制を強めている。しかし、グローバリゼーションの破綻は、中国において、労働者の大量失業と反乱が最も激しく広がる。地方政府や地域権力が中央の統制に服せず、独自に動き出す事態―ソ連崩壊の最終局面の様相―が進展するだろう。 EUはもっと危機的である。既に、いくつもの国が債務危機のために、社会のインフラやサービスを維持できなくなりつつある。社会が崩壊して行っている。アメリカと同じように、反グローバリズム運動の流れとともに、ポピュリズムが台頭しており、EUの解体、分離独立運動や権力の分裂が進行していくだろう。同時に、社会の崩壊に対応して、独自の自治組織や自立的な運動が広がっており、それは新しい社会を生み出す試みである。 変革の展望 古典的に言えば、保護主義は、世界経済のブロック化から国家間の戦争的対立である。それは、グローバリゼーション以前の時代、資本の活動の重心が基本的に自国経済内にあり、国家が自国経済を総括している時代の危機の形であった。 グローバリゼーションの時代、グローバル資本の活動は、各国の政府や経済の制度などは全く無視して、グローバルなガバナンスの下で、ただ収益の最大化を基準にグローバルに展開している。グローバル資本が栄え、各国の国家・経済・社会は荒廃の一途をたどっている。今日の危機は、むしろ、荒廃した国家や社会の破綻や分裂といった形で進行する。そして、そういう事態を恐れる指導者が、ポピュリズムと相呼応して、対外戦争や国内戦による危機打開に走る可能性である。 「外被の爆破」 覇権の論理が、政治・経済・軍事の支配力であるともに擬制的な普遍性であると述べたが、経済的諸制度から国家的諸制度に至るまで、それらは、搾取・収奪という資本の論理を正当化し延命するために、幾重にも重ねてきた「外被」(マルクス『資本論』)である。そして、資本の論理・連関は、本質的には、労働の論理・連関の疎外形態であった。 ところが、トランプは、そういう「外被」を放り出すという。まさに「外被の爆破」である。もはや、グローバリゼーションまでに行き着いた資本の論理と、その「外被」である覇権の論理や国家の論理とが「調和」しえなくなっている。そしてその「外被の爆破」は、論理的に言えば、たちまち資本の論理の破綻へと「転回」する。それは、労働の論理・連関の回復、アソシエーション(人格的連合)の時代の潜在的な始まりである。 韓国に学ぶ 米朝首脳会談に至るプロセスは、アメリカ覇権の揺らぎを捉えて、戦争危機を平和と新しい社会建設のチャンスに転化したものだといえる。途方もないスケールの国際政治の展開を、現場の人びとの営々たるたたかいの積み重ねの上に切り開いている。そこには、民主化抗争の歴史、労働運動と市民運動の歴史があり、その上に社会的連帯経済、協同組合、労働組合、地域運動の広がりと粘り強さがある。そしてソウル市の行政という拠点が大きな力を発揮している。それらを基礎にろうそく革命が起こり、国際政治をも動かした。 世界秩序崩壊、国家破綻、社会崩壊、戦争・内乱という時代、アソシエーションが潜在的に始まる時代にどうたたかうかということを、韓国の人びとのたたかいは示している。(おわり)

誰が安倍を支えているのか
太田昌国さん 大阪で講演

7月6日、大阪市内で〈共謀罪に反対する市民連絡会・関西〉主催、〈戦争あかん! ロックアクション〉共催の「腐食する国家と共謀罪」という集会が開催された。 講師は現代企画室編集長の太田昌国さん。豪雨の影響で遅れて会場に到着した太田さんは、「今日は共謀罪そのものについての話しというよりも、なぜ日本社会が共謀罪を必要とするようになったのかについて話をしたい」と前置きをし講演を始めた(写真上)。 講演では、1945年の敗戦を境として、明治150年を2分し、敗戦までの77年を前半、敗戦から今日までの73年を後半とした。そして世界の時代状況の変化、日本の時代状況の変化について時系列に沿って話を進めた。そして今日の課題を次のように述べた。 1991年、日本軍「慰安婦」にされた金学順さんが謝罪と補償を求めて日本政府を提訴した。研究者のなかから日本人は戦後73年間戦争にかかわらなかったという認識でよいのかと問題が提起された。 1997年、自民党内の安倍晋三、中川昭一、菅義偉など衆議院議員84人と参議院議員23人が「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を結成した。日本会議、拉致被害者家族会を結成したのもこの年。「若手議員の会」には今、安倍政権を支えている議員が数多くいる。 2002年の日朝首脳会談で「拉致」事件が顕在化すると、マスコミは拉致被害の報道ばかりおこない、国交正常化できないようにし、06年安倍政権が誕生。一時的に民主党が政権を握ったが、12年にはまた安倍政権が復活。13年の特定秘密保護法成立を皮切りに、集団的自衛権行使容認の閣議決定、戦争法成立、17年には共謀罪を成立させた。 この間、中国、朝鮮、韓国にたいし政府やメディアによる意図的で一方的な悪宣伝がおこなわれている。その結果社会全体に排外主義的な風潮が浸透し、安倍政権を支持する一定のベースが形成されている。あきらめるとその分、こちらの力が弱まる。最後まであきらめないことが肝心だ。(池内慶子)

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ろうそく革命と現代韓国(下)
1700万人参加、民衆運動の底力示す
文京洙さん(立命館大学国際関係学部教授

保守政権から進歩派政権へ 進歩派の敗北 87年から保守政権の10年、97年から進歩派政権の10年があって、07年と12年の選挙では進歩派が敗北する。 07年選挙の敗北は、廬武鉉の時代に、グローバル化で起こっている問題にたいして解決能力を持てなかったということがある。とりわけ、02年の選挙で廬武鉉を大統領に押し上げた若い人たちが、グローバル化のもとで厳しい状況に直面し、廬武鉉を見放したということができる。 李明博政権は、掲げた政策をほとんど達成できず、経済危機を改善できないまま政権の末期を迎えた。だから、本来でいうと12年末の選挙(文在寅と朴槿恵が争った)で、進歩派が勝利してもおかしくなかった。それがなぜ勝てなかったのか。2つの要因があるだろう。 1つは、インターネット時代の独特の選挙不正があった。 もう1つは、進歩派の勢力が分裂した。進歩派から文在寅とともに安哲秀が出た。 進歩派の分裂の一番大きな要因になっているのが世代対立だった。 ここで世代別の支持を見てみる。 20代、30代は圧倒的に文在寅を支持。50代、60代は朴槿恵を支持。 60代は、朝鮮戦争を前後する時期の反共的な冷戦主義のなかで生きてきた人たちで仕方がないだろう。 問題は50代。人口的にも一番多く、基本的にリベラル、進歩的な人たち。しかし、韓国社会が直面しているあらゆる問題に苦しんでおり、この世代が、進歩派を支持しなくなった。このことが、進歩派分裂の一番大きな原因。文在寅は廬武鉉の側近だったが、ノパ(廬武鉉派)は進歩派で運動圏的勢力を内部に抱え込んでいるわけだが、独善的なところがあると評され、ノパにたいする反発も40代後半から50代の世代にある。これも進歩派の分裂をもたらした。 セウォル号事件 朴槿恵政権の経過は周知の通りだが、16年のセウォル号事件は非常に大きな意味を持った。 それは、近いスパンでいうと李明博から朴槿恵の10年間の保守派の政治、もっと長いスパンでいうと、大韓民国ができて以降の権威主義的な政治が蓄積してきた歪み・矛盾が、2016年セウォル号事件という形で噴き出したといえる。 さらに、2016年10月末から、崔順実ゲートが暴露される。この背景には韓国の社会のあり方がいろいろな形で現れたと言える。 保守言論の亀裂 もともと韓国では「朝鮮日報」、「中央日報」、「東亜日報」の保守言論が圧倒している。他方、「ハンギョレ新聞」や「京郷新聞」といったリベラルな新聞もあるが、50代以降の人たちの間では保守言論が圧倒している。 ところが朴槿恵批判のきっかけを作ったのは保守言論の「朝鮮日報」だった。保守政権と保守言論とは対等な同盟関係を形成してきたが、朴槿恵は、保守言論にたいして、対等な同盟関係ではなく、父親の朴正煕が育てた家来ぐらいにしか見なかった。そういう扱いにたいして保守言論としての意地もあり、朴槿恵に反旗を翻した。さらに、「朝鮮日報」と「ハンギョレ新聞」と水面下での協力ということも生まれて、朴槿恵政権を追い詰めていく。 ケーブルテレビ局「JTBC」(注5)も、「中央日報」系で保守的なのに、疑惑を暴露する報道をおこなった。 さらに「MBC」(注6)や「KBS」(注7)では労働組合が相当長くたたかっていた。そして「MBC」は最終的にたたかっていた組合の委員長が社長になった(注8)。『共犯者たち』という言論界のたたかいを描いたドキュメンタリーがあるが、その主人公が今度「MBC」の社長になった人で、もう徹底的にたたかっている。嫌われても嫌われても、その李明博の追っかけをやったり、取材を展開してたたかっている。労働組合としてもたたかっている。 「朝鮮日報」や「東亜日報」は政府との同盟関係にあって、基本的な傾向は保守だが自立している。記者として経験を積んで相当強いし、独立した言論機関としてプライドもある。そういうことがあって今回のろうそく革命を導く言論界の動きにつながったといえる。 脱中心 ろうそくデモは合計23回、毎週デモがあって1700万人が参加している。世界的にみても未曽有の規模。 その最大の特徴は「脱中心」、中心がないことだ。 16年11月9日、「朴槿恵政権退陣非常国民行動」がつくられた。韓国社会の2000余りの市民団体がすべて参加するような組織。87年6月民主抗争のときは「民主憲法争取国民運動本部」というのが大きな役割を果したが、それには中心があった。ろうそくデモについてはそういう中心が指摘できない。一応、組織は出来たが、スケジュールや日程を調整するぐらいしかできなかったと、「非常国民行動」の代表をした人が回顧している。 どんな人たちが参加したかというと、競争圧力とか就職難に苦しむ青少年たち、非正規の労働者、LGBT(性的マイノリティ)といわれる人たち、社会的な差別を受けている人たち。農民もトラクター部隊でソウルにやってきて参加している。芸能人もたくさん参加している。 一人で参加 参加者の特徴として、一人での参加がある。もちろん、386世代が家族で参加するというのも非常に多かった。しかしまた、一人で参加するというのは、韓国社会の大きな変化の現れだ。10年ぐらい前だったら、食堂で一人で食事ができなかった。料理が4〜5人前を前提にしているから。今は一人飯が増えている。韓国社会の共同体的な生活慣習が相当崩れてきていて、それがろうそくデモのスタイルに反映している。 23回、1700万人参加のデモで、ほとんど大きなトラブルもなかったのは世界的にも画期的なことだが、これは朴元淳ソウル市長の存在が相当大きい。保守派が市長だったら、警察は市長の意向を受けて動くので、ああは行かなかったかもしれない。 6月地方選挙 6月12日米朝会談の翌日の13日に統一地方選挙がある。文在寅政権の中間評価としての意味を持つ。 00年代に異議申し立て型の市民運動からの転換があり、市民運動が社会問題の解決に乗り出すという領域があって、そのときに、社会運動の取り組みの重要問題として浮上するのが地域。地域社会のなかで起きている問題にたいして、進歩派の行政や市民運動が、どれだけ解決能力を持つのかが非常に重要な課題として提起された。 だからソウルは非常に大事。ソウルの朴元淳市長は、90年代からの市民運動のトップランナーだった。その朴元淳がソウル市行政を担っているということは非常に大きいと思う。 日本を見ていると、地域が保守化している。それが日本の全体の保守化の土台になっている。その意味でも、韓国の今度の地方選挙でどれだけの成果を、進歩派や市民運動が挙げられるのかが注目されるところだ。 中道改革派 文在寅は、日本でも心ある人たちに人気があるが、韓国の政治的な地形のなかでいうと、中道改革派ぐらいの位置。象徴的な話として、文在寅が当選し訪米したとき一番最初に訪問したのが「長津湖の戦い」の慰霊碑。朝鮮戦争のとき、中国軍に包囲されたアメリカ軍がおこなった脱出作戦で、住民も米軍艦船で避難。そのなかに文在寅の両親もいた。だから「自分が今あるのは、あの時、アメリカが戦ってくれたおかげ」という話。 基本的に韓国の左派は反米。そういう点で文在寅やその周りの人びとは左派ではなく、韓国の文脈でいうと進歩派、日本の文脈でいうと中道改革派ぐらいの人。 グローバル化推進 廬武鉉、文在寅の流れの人たちが左派ではないということの一つの証左が、経済のグローバル化を推進してきたことだ。アメリカからの圧力ではなく、グローバリゼーションのなかで韓国が生き残ろうとしたら、そういう政策を展開するほかないというのが基本的な考え方。 進歩派の政策の特徴は、一方で、グローバリゼーションのなかで韓国経済の競争力をいかに高めるかということと、他方で、その手当を社会保障や社会的経済など強める形で手厚くしていくということ。イギリスの第三の道と同じ方向だといえる。 だから民主労総は支持しない。民主労総は、正義党と一番親和性がある。大統領選挙では有権者の10%ぐらいの支持、300議席のうち6議席。 鍛えられた政治家 とはいえ、この20年余りの間、87年の民主化闘争をリードした進歩派が、色々な経験をし、成功と失敗と挫折を繰り返して、相当に鍛えられている。南北関係についても、財閥とのやり取りでも、かなり訓練を積んで鍛えられた政治家になっている。 南北関係についても、そういう人たちが、非常にしたたかな政策を展開しているわけである。    (おわり) (注5)韓国で衛星放送やケーブルテレビ向けに放送をおこなっている「中央日報」系のテレビ局 (注6)韓国文化放送。政府が出資して民間で運営するという半官半民 (注7)韓国放送公社。韓国の公共放送労働者たちが「放送の公正・公平」を主張して壮絶なたたかいを繰り広げてきた。 (注8)ストライキで解雇されていた辣腕プロデューサーの崔承浩氏が昨年12月、新社長に就任

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投稿
「介護の切り捨て」許さない
命こそ最も大切な価値
土田花子

労働運動の再生をめざして

2014年秋、全日建連帯関西地区生コン支部、全港湾大阪支部、港合同のよびかけで「労働運動再生のための懇談会」が発足した。「関西生コン型労働運動」を多くの業種・産業に拡大し、労働運動の再生をめざす運動である。 関西生コン支部は長年、労働者を業種別に組織すると同時に経営者を協同組合に組織し、共同してゼネコン・セメントの巨大資本とたたかうことで、零細企業の共倒れを防ぎ、労働条件の高い水準を勝ちとってきた。この流れは関連業種であるバラセメント輸送・コンクリート圧送業界にも拡大、またトラック業界でも複数の労働組合が加盟して地道に運動を続けてきている。実践的に有効性が証明され、多くの業種・職種で必要性がますます高まっている状況の中で「懇談会」が発足し、まず介護部門での取り組みが始まった。 介護労働の実態 高齢者・しょうがい者の暮らしと命を支える介護労働にはコミュニケーション能力(人間的な関係をつくる力)、倫理性、幅広い知識と技術、経験の積み重ねが求められる。しかし約170万人の介護労働者の賃金は全産業平均賃金より月10万円も低く、社会的評価も決して高くない。たえず緊張を強いられながら心身を酷使する長時間労働、組み込みのサービス残業、深夜勤と不規則な交代勤務、訪問ヘルパーでは「登録型」など非正規雇用が8割近くで、主力は60代、70代の女性である。「潰れる」か「逃げだす」か、否、それさえ許されない現実のなかで、皆ヘトヘトだ。どの介護職場でも共通する深刻な問題が人手不足。ヘルパー資格者の1割以下、介護福祉士資格者の45%しか介護職に就いていない。根本原因は劣悪な労働条件にあるが、一向に改善されないため、人手不足と劣悪労働条件の悪循環は深まるばかりだ。増え続ける虐待はこうしたなかで起こるべくして起こっているのだ。 介護保険制度発足から17年で業界自体が若く、労使とも労働組合(集団的労使関係)の経験はないに等しい。「奉仕精神」が空気のように職場を覆い、労基法違反が蔓延している。なので労働相談も多い。個別事業主との間で問題を解決する取り組み、組合づくりの追求は重要だ。が、それだけでは如何ともしがたい壁が介護保険制度である。 安心できる介護を 多くの中小零細介護事業所は、介護保険制度のもとで、国が決定する極めて低価格の介護報酬をほぼ唯一の収入源として経営をやりくりしている。2015年4月、政府は介護保険法「4大改悪」と過去最大の介護報酬引下げを強行した。そのために、特に小規模事業所で閉鎖・倒産件数が過去最高を記録。「障がい福祉サービス」も介護保険と一体化して改悪する動きが進んでいる。 介護労働者の職場を守り、生活と権利、介護の質と量、「利用者」の尊厳と権利を一体のものとして勝ちとらなければ「安心できる介護」はない。そのためには介護保険制度・政策を変えるたたかいが必要である。 労働運動が主導し、事業主も組織し、介護(医療)業界全体を巻き込んで力を結集できれば、国・自治体を揺り動かす展望と可能性が見えてくる。 そこで介護労働者、労働組合、事業者、市民、誰でも参加できる組織として立ち上げたのが「安心できる介護を! 懇談会」である。2015年5月、初めて「介護保険法4大改悪と立ち向かう」学習集会を開催した。 介護保険は国家的詐欺 介護保険制度の大きな問題点は介護サービスの利用増が保険料に跳ね返る仕組みにある。なかでも65歳以上の保険料を高く設定したうえ、年金から天引き、保険料のために生活費、命を削っている高齢者は多い。 政府・自治体は介護サービス利用制限(給付削減)と介護報酬引き下げ、保険料値上げを重ねてきたが、介護保険制度をつくった当時の厚生省高官まで「国家的詐欺」と指弾するように「保険料あって介護なし」をめざしている。 2015年4月施行の「4大改悪」のひとつが要支援者への生活援助とデイサービスを制度の枠から外して市町村事業に移行する攻撃だ。無資格者や住民ボランティアによる低価格のサービスを自治体の責任でやらせる、または切り捨てさせるものだ。いわゆる「要支援切り」だ。大阪市は4月施行だが、新規の要支援者の大半が訪問介護において現行と同じサービスを受けられない、介護報酬は25%減という事業案を出しており、見直し・撤回を求め続けてきた。自治体自らが介護労働者の「処遇改悪」を促進するものでもある。 制度解体に反撃 さらに安倍政権は今国会で、福祉用具、住宅改修、生活援助の原則自己負担導入などの「軽度者(要介護2まで)切り」の介護保険法改悪案上程を狙っていた。要介護認定者は65歳以上の2割弱、そのうち6割強を保険から切り離すものでまさに介護保険制度解体攻撃だ。 福祉用具業界が立ち上がり、昨秋には署名が23万筆を超えた。全国でさまざまな運動が展開され、260近い地方議会で意見書可決が相次いだ。「安心できる介護を!懇談会」もネット署名を呼びかけ、大阪社会保障推進協議会や研究者とともに「介護・福祉総がかり行動(準)」を立ち上げた。昨年11月25日には「介護の切り捨てアカン! 本気の大集会」を250人の参加、140団体・135個人の賛同で成功させ、大阪市と厚労省に提出する「共同アッピール」を採択、全国に発信した。相呼応するように東京でも11月11日介護保険制度を守ろうと市民の大集会が開かれエールを交換した。12月5日厚労省アクションでは街宣、1万4千筆弱の署名と共同アッピール提出、直接交渉とインパクトある行動を展開した。 大きな不安と怒りの声に包囲され、政府は昨年12月「軽度者切り」は一旦の先送りを発表。が、生活援助は来年からの介護報酬見直しのなかで実質的切り捨てを狙っている。今国会上程の改悪案には自己負担3割導入を盛り込んだ。2017年度予算案では70歳以上の高額療養費(医療)の負担増とともに高額介護サービス費の自己負担増が盛り込まれている。総じて保険給付削減、社会保険からの介護納付金引き上げ、自己負担引き上げのオンパレード、年金カット法の施行とあわせて高齢者の首をジワジワと絞めあげていく。 今国会上程の改悪案には自己負担3割導入を決定。他方で、人手不足を解消させる処遇改善策(最低でも月10万円の賃上げが必要)は皆無である。 当面の課題として、◆介護保険法改悪―3割負担導入に反対し、◆来年にむけて審議される介護報酬改定で報酬引き下げと生活援助などの切り捨てを許さず、◆大阪市の「要支援切り」に粘り強く抗し、◆介護労働者の労働条件改善のたたかいがある。5月12日「介護・福祉総がかり行動」を正式に立ち上げ、これ以上の介護切り捨てを許さない大集会が呼びかけられている。介護労働と介護切り捨てを許さないたたかいは「今の社会において命を最も大切な価値としていく」実践であり、戦争の対極にある。地域で介護事業者、労働者、利用者・家族や住民に地道に訴え、声を集めて「総がかり」を実現していこう。命を守る運動と戦争を許さないたたかいが一つになるとき、大きな力となって安倍の改憲を押し返すことができる。 多くの皆さんの参加を呼びかけます。

労働ニュース

●米ファストフードの従業員ら、トランプ氏の労働長官指名に抗議 最低賃金を時給15ドルに引き上げるよう求める労組が支援するデモ活動組織「15ドルへの闘い」は12日、ファストフード大手CKEレストランツ・ホールディングスのアンディー・パズダー最高経営責任者の次期労働長官への就任に反対し、CKEの運営する「カールス・ジュニア」や「ハーディーズ」で抗議活動。 トランプ米大統領の熱心な支持者であるパズダー氏は、最低賃金引き上げや労働条件をめぐる政府の規制に批判的なことで知られる。「15ドルへの闘い」は、4年間の活動を通じてカリフォルニア州やニューヨーク州での最低賃金の大幅な引き上げに貢献。レストラン産業は、米国の最低賃金で働く労働者が最も多い業界。(1月12日) ●関電課長の過労自殺で関電社長に出頭指導 運転開始から40年を超えた関電高浜原発の1、2号機の運転延長をめぐり、規制委員会の審査に対応していた関電課長職男性が過労自殺した(昨年4月)問題で敦賀労働基準監督署は、関電の岩根社長に出頭を求め「全管理職の労働時間」を適切に把握するよう指導していた。男性は40代、1カ月の時間外労働は最大200時間に及んでおり、過労自殺として労災に認定。 企業や組織内で「管理職」とされていても、裁判などで管理監督者に認定されない事例が多いなか、異例の指導。 (1月15日) ●上位8人資産、下位50%と同額 貧富の格差拡大でNGO警告 国際非政府組織(NGO)オックスファムは16日、世界で最も裕福な8人と、世界人口のうち経済的に恵まれていない半分に当たる36億7500万人の資産額がほぼ同じだとする報告書を発表した。 報告書は、8人の資産が計4260億ドル(約48兆7千億円)に上り、世界人口73億5千万人の半分の合計額に相当すると指摘。1988年から2011年にかけ、下位10%の収入は年平均3ドルも増えていないのに対し、上位1%は182倍になったとしている。(1月16日)